2014年04月24日

義父の土地の上に建物を所有しています。義父が亡くなり、相続人である義母と妻の弟から明渡しを求められています(遺産分割)


質問
 私は、妻の父から土地の提供を受け自宅を建築し居住していましたが、その義父が亡くなりました。義理母、妻、その弟の三名が法定相続人です。
これまでの土地の使用について賃料等の支払いはありませんでしたので使用貸借であるものと思います。
最近、妻の弟から土地をどうしたいのか見解を問う旨の内容証明郵便を出す旨妻に連絡がありました。弟は土地を売却し現金に換えたいとの意向を持っているようで、義理母も同調しているようです。
どのように対応するべきでしょうか。

答え
 使用借権の権利の終了時期については、民法に「契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない」(民法597条1項)、「返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わったときに、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる」(民法597条2項)、「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う」(民法599条)という規定があります。
 ですから、特に契約で終了の時期を定めなかった場合は、土地上の建物の存続期間中又は借主(建物の所有者である相談者)の死亡のいずれか早い時までは、使用借権は存続します。

 貸主の死亡は使用貸借の終了事由ではありません。ですから、義父の死亡によっては、使用借権は終了しません。

 使用借権には第三者への対抗力がないので、土地が第三者に売られてしまえば、その第三者に対して使用借権を対抗することはできません。しかし、土地がただちに売られる心配はありません(妻が所有者の一人なので)。

 そういうわけですので、義理の弟さんや義母から建物を撤去しろと要求されても、それに応じる必要はありません。

 結局、問題は、使用借権の負担の付いた底地を含む義父の遺産の分割を、義理母、妻、その弟の三名でどのように行うかということになります。

 遺産分割調停が申し立てられるのを待って、調停の場で合意をめざせば良いでしょう。

 弟さんからの内容証明郵便に対しては、「土地を売るつもりはありません。遺産分割協議が必要であれば調停を申し立てるなどしてください」などと、自ら、又は弁護士に依頼して回答するのが良いでしょう。
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遺言書と矛盾する財産の処分(遺言・遺産分割)


質問
 遺言書の事で、お聞きします。
 父親が危篤状態になり、母親が父親名義の証券や不動産の名義を母親に変更しているようです。
 しかし、私は、父親から危篤になる前に、遺言書を書いてもらっています。
 父親が生きているうちに、母親、他の相続人に、財産を名義変更されてしまった場合、いくら遺言書があったとしても、遺言書はただの紙切れ同然なんでしょうか。


答え
 遺言者が遺言と矛盾する財産の処分をした場合は、その部分については遺言は撤回されたものとされます(民法1023条2項)。
 つまり、生前の処分の方が、遺言より、優先します。

 お父さんには、実印や登記識別情報等の管理を厳重に行ってもらい、遺言に反する財産の処分を認めないようにがんばってもらうしかありません。

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