質問
現在事業所として賃借している物件が近日中に競売にかかると裁判所から連絡がありました。
私どもの事業所では、賃借後、賃借人の費用負担でスプリンクラーを設置し、設置費用約400万円を負担しています。仮に、立ち退きとなった場合、この造作設置費用は、競売買受け人に負担請求できるのでしょうか。
回答
難しい問題ですが、実務上はスプリンクラーも建物と一体化していますので、競売によって競落人の所有となり、ただ、民法196条2項の有益費償還請求の対象になるという処理がなされることになろうかと思います。
民法196条2項「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」
競売手続における物件の調査や鑑定人の評価の上で、スプリンクラー部分について有益費償還請求権が生じるということを十分に考慮してもらえるよう努めることが重要になります(というのは鑑定人の評価などでそうした事情が十分に考慮されていれば競落人も有益費償還請求権の行使を覚悟した上で競落するので)。
事業所が公益的な事業目的を有しており係属して同一の事業所で事業を行うことが期待されるというような場合には、できれば行政に働きかけて、競売手続の現況調査や鑑定人の評価の段階で行政から意見を述べてもらう機会を作れるよう努力するべきだと思います。競落人が、公益的な事業所の継続的な利用を覚悟して競落してくれる可能性が生じる可能性がないことはないと思います。
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