2008年03月30日

自由法曹団が規制改革会議第2次答申(労働分野)批判の意見書を発表

自由法曹団(私たちも加わっている弁護士の団体です)が、2008年3月25日「人間らしく働くルールを破壊し、国民の生存権を否定する規制改革会議第2次答申(労働分野)批判意見書」を発表しました。
http://www.jlaf.jp/jlaf_file/080325roudou.pdf

以下、意見書から、労働者派遣に関する部分を抜粋して紹介します。

第1 【問題意識】について
3 労働者派遣法の規制の完全撤廃を推進
(1)派遣期間の制限と派遣業種の限定の完全撤廃、紹介予定派遣の派遣可能期間の延長
@ 答申は、「いわゆる26業務等以外においては、派遣=『臨時的、一時的』な労働力需給調整システムとの考え方の下、平成15年の派遣法改正によっても、一定期間(長くても3年)に制限されており、しかも同改正により、違反を防ぐ目的で、新たに派遣先に対し雇用申込み義務が課されることとなった。この結果、派遣先企業、派遣労働者ともに派遣就業の継続を望んでいる場合であっても、期間経過前に派遣が打ち切られる事態が発生している。」、「したがって、労働者派遣法は、派遣労働を例外視することから、真に派遣労働者を保護し、派遣が有効活用されるための法律へ転換すべく、派遣期間の制限、派遣業種の限定を完全に撤廃するとともに、紹介予定派遣の派遣可能期間を延長し需給調整機能を強化すべきである。」と主張している。
A しかし、制限期間を超えて派遣労働者を使用しようとする時は、派遣先企業は派遣労働者を直接雇用するのが労働者派遣法の趣旨である。答申は 「期間経過前に派遣が打ち切られる事態が発生している」と言うが、「期間経過前に派遣を打ち切る」という脱法行為を行っているのは派遣先企業である。派遣先企業の脱法行為を取り締まることこそ重要なのであり、派遣期間の制限を撤廃する理由は何ら存在しない。
B 現在、港湾運送業務、建設業務、警備業務、病院等における医療関連業務は、それぞれの業務における「労働者保護の観点」もしくは「業務の適正な遂行の観点」から、労働者派遣が禁止されている。
労働者派遣は、雇用関係と指揮命令関係が分離され、安全配慮義務等の使用者責任が曖昧になりがちな制度である。いま港湾運送業務等への違法派遣で労災隠し等が多発している実情に照らす時、派遣業種の限定を撤廃する理由はまったくない。
現在求められている労働者派遣法の改正は、派遣業種の完全撤廃ではなく、労働者派遣法制定の原点に立ち返り、派遣業種を専門的業務に限定することである。
C 現在、紹介予定派遣の期間は6か月とされている。紹介予定派遣期間の就労は試用期間の就労と類似の就労であるから、6か月を超えて延長する理由は何ら存在しない。紹介予定派遣の派遣可能期間の延長は、派遣先の便宜のために労働者の地位の不安定化をもたらすだけである。
(2)労働省37告示の見直し
@ 答申は、「これらの運用において、製造ラインに組み込まれる形での請負が定着しているなか、例えば、部品個別の受渡し全てに伝票を要することは、生産現場の効率を著しく損なう原因となっている。また、注文主の所有する機械、設備について、賃貸借契約を作成する際の金額評価方法は統一されていないといった声もある。」、「モノづくりの実態において法解釈が過度に事業活動を制約している点、また、法解釈に予測可能性が乏しい点、実態と整合していない点等の指摘があることを踏まえ、法の適正な解釈に適合するよう37号告示及び業務取扱要領を改めるべきである。少なくとも、さしあたり37号告示の解釈が明確となるよう措置すべきである。」と主張している。
A 現在必要なことは、「偽装請負」=「違法派遣」を厳しく取り締まり、派遣先企業に対して、直接雇用義務や安全配慮義務等労働者派遣法に基づく派遣先の義務を果たさせることである。
答申の言う「製造ラインに組み込まれる形での請負」は、それ自体「偽装請負」の疑いの強いものである。そうであるのに答申は、「部品個別の受渡し全てに伝票を要することは、生産現場の効率を著しく損なう原因となっている」等と言って、注文主と請負事業主との関係を簡略・曖昧化しようとしている。答申の主張にしたがえば、生産現場で「偽装請負」はますますはびこることになる。答申は、「偽装請負」をなくす方策をこそ提言すべきであって、答申の主張はとうてい容認できない。
「偽装請負」をなくすために考えられる37号告示の改定例は、告示第2条2項ハ(2)「自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。」を請負として認めている条項を削除し、同(1)「自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。」のみが請負として認められるとする改定である。

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