2010年03月30日

堀越事件、高裁で無罪判決

足利事件の菅家さんの完全無罪判決に続いて、国家公務員の休日の政治活動の自由の過度の制約を違憲とする、とてもうれしい無罪判決が出ました。

いずれの事件も私は関与していませんが、私が以前在籍していた代々木総合法律事務所の弁護士など、多くの弁護士が集団的に取り組んできた事件です。

堀越事件無罪判決に関する自由法曹団の声明を紹介します。
http://www.jlaf.jp/jlaf_file/100330horikosijikenmuzaihanketu-seimei.pdf
堀越事件無罪判決に関する声明
1 東京高等裁判所第5刑事部(中山隆夫裁判長)は、29日、元社会保険事務所職員の堀越明男氏に対する国家公務員法違反(政治的行為の禁止)事件について、罰金10万円、執行猶予2年とした一審判決を破棄し、無罪判決を言い渡した。
2 判決は、堀越氏の職務内容とその裁量の余地のないこと、管理職でないこと、行為の態様などを詳細に認定したうえ、勤務時間外に職場から離れた自宅付近で、職務と関係なく行った政党機関紙号外の配布は「公務の中立的運営とこれに対する国民の信頼」を害する抽象的危険すらないものであり、こうした行為を罰することは憲法21条と31条に違反すると判断し、この行為は罪にならないとした。
この判断は憲法の基本原則と国際法に従った積極的で妥当な判断である。
またこれは、「当該公務員の管理職・非管理職の別、現業・非現業の別、裁量権の範囲の広狭などは・・・・法の目的を阻害する点に差異をもたらすものではない」と広く公務員の政治的行為を刑罰をもって禁止することを正当化した猿払事件最高裁判決の判断を、実質的に否定したものと評価される。
3 この裁判では、憲法、刑法、国際法をはじめ各界の法学者が学会の最新の豊かな知見を裁判所で明らかにした点が特筆されが、判決はこれに応えたものである。
4 今日、政治的なビラ配布に対する不当な弾圧がくり返されてきた中で、今回の判決が、表現の自由と政治活動の自由の大きな意義を確認し、その上に立って、日本での公務員の政治活動の禁止が諸外国に比べ著しく広範なものになっていることをふまえ、刑事罰の対象とすることの当否と範囲について、再検討し整理するべき時代が到来しているとしたことは、公務員の政治的自由にとどまらず、ひろく国民一般の表現の自由と日本の民主主義にとって、画期的な意味を持つ。
5 こうした判決の結論は、日夜を問わず長期にわたり執拗に堀越氏を尾行し、ビデオ撮影をくり返し、そのプライバシーを蹂躙した公安警察の暗躍を許されないものとするものである。
6 自由法曹団は、この間、国民の自由と日本の民主主義の未来にかかわる問題として、ビラ配布の権利と公務員の政治活動の自由を守り、拡大する課題に力をつくしてきた。私たちは、今回の判決をふまえ、広範な人々とともに、表現の自由と政治活動の権利を擁護し強めるために、いっそう奮闘する決意である。
2010年3月30日
自由法曹団
団 長 菊 池 紘

追記
日弁連会長声明を紹介します。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/100405.html
国家公務員法違反事件無罪判決に関する会長談話東京高等裁判所は、2010年3月29日、政党機関紙をマンションの郵便受けに配布したとして、国家公務員法違反の罪に問われていた社会保険事務所職員に対し、第一審の有罪判決を破棄し無罪とする判決を言い渡した。

本判決は、国家公務員の政治的活動に対する罰則規定自体の合憲性は認めつつも、職員の職務内容及び職務権限に裁量の余地がなかったことなどから、本件配布行為は、国民の法意識に照らせば、行政の中立的運営及びそれへの国民の信頼の確保という保護法益を侵害するものとは考えられないとして、罰則規定を適用することは憲法21条1項及び31条に違反するとした。

これまで、裁判所は、猿払事件に対する1974年の最高裁判所大法廷判決以降、公務員の職種・職務権限等を区別することなく広く刑罰をもって禁止することを正当化してきたが、その姿勢に対しては広く批判が加えられてきた。国際人権(自由権)規約委員会は、2008年10月、政府を批判するビラを郵便受けに配布したことによって公務員らが逮捕、起訴されたことに対して懸念を示し、日本政府に対し、表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきであると勧告した。当連合会も、2009年第52回人権擁護大会において、裁判所に対し、市民の表現の自由に対する規制が必要最小限であるかにつき厳格に審査することを求め、政府及び国会に対し、国家公務員法の改正を提言したところである。

本判決は、厳格審査の点について適切な判断を行ったのみならず、立法問題についても、わが国における国家公務員に対する政治的行為の禁止は、諸外国と比べ広範なものになっており、グローバル化が進む中で、世界標準という視点などからも再検討される時代が到来している旨、付言をしており、人権諸条約と国内法との整合性を問う人権保障システムの構築が日本でも現実の課題となっている現在、司法及び立法のあるべき方向を示したものと評価できる。

当連合会は、表現の自由が民主社会の死命を制する人権であることを十分踏まえ、政府に対し、国家公務員法の政治的活動に対する罰則規定をすみやかに改めることを求める。

2010年(平成22年)4月5日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
posted by siinoki at 21:41| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記
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