2010年07月08日

労働者派遣業法について考える〜1〜

 通常国会に提出されていた労働者派遣業法改定案の審議は、鳩山首相退陣の政変によって、次期国会に持ち越されました。この機会に、労働者派遣業法のそもそもの問題点について、考えてみませんか。

憲法の労働基本権・職業安定法44条・労働基準法第6条は、労働者供給事業と中間搾取を厳しく禁止し、直接雇用のもとでの労働条件の確保を図っています
 
 職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)は、「何人も、・・・労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」として、労働者供給事業を厳しく禁止しています。

 「労働者供給事業」とは、いわゆる「人貸し業」です。供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる業のことです(職業安定法第5条第6号(労働者供給の定義))。

 労働基準法第6条(中間搾取の禁止)は「何人も法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」として、中間搾取を厳しく禁じています。

 これらの法律は、労働条件の最低基準を法律で定めるべきとする日本国憲法の規定に基づく基本的な法律です。
 ※日本国憲法第27条第2項「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」。

なぜ、労働者供給事業(人貸し業)と中間搾取が厳しく禁止されているのでしょうか。

 第二次世界大戦の敗戦前から敗戦直後の日本、まだ、労働者保護のための法律が十分に整備されていない時代には、労働者が就労するにあたって、それを食い物にする悪質な人貸し業者、ピンハネ業者(「人夫供給業」や「組請負」などの名称で行われた間接雇用。GHQから「労働ボス」と呼ばれた。)が横行していました。

 労働者は、こうした労働者供給業者から多額のピンハネを受け、人間的でない扱いを受けていました。

 こうした労働者供給業者の存在と労働運動を犯罪扱いする政治体制は、戦争を推進した軍国主義体制を支える重要な土台となりました(参考:小林多喜二「蟹工船」など)。

労働者供給事業・中間搾取を禁止した戦後の改革

 戦後の改革で、このような前近代的な労働関係を改革するため、職業安定法、労働基準法により、労働者供給事業の禁止、中間搾取の禁止が実現されることになりました。

 職業安定法は労働者供給事業(人貸し業)を禁止して間接雇用を禁止しています。

 また、労働者と実質的な使用者との間に直接的な雇用関係がなければ、職業安定法や労働基準法や憲法による労働者の権利確保のための規制が実効のないものになってしまいます。職業安定法、労働基準法、憲法の労働基本権の規定を実効のあるものにするためには、間接雇用は許されません。

 これらの憲法、法律の規定は、「直接雇用の原則」を含むものとして解釈されなければなりません。

労働者供給事業禁止・中間搾取の禁止・直接雇用の原則の「例外」を次々に拡大してきた労働者派遣業法

 ところが、1985年に労働者派遣業法が成立し、労働者供給事業が労働者供給事業禁止の「例外」として認められ、間接雇用が容認されました。その後、労働者派遣業法は、次々に「例外」を広げていきました。

 労働者派遣業法の成立当初、「例外」として認められる派遣業務は13の専門業務に限定されていましたが、規制緩和を求める財界の要求で26業務に拡大され、1999年には対象業務が原則自由化されました。

 2004年には、それまで禁止されていた製造業にも労働者派遣が自由化されました。政財界による「構造改革」という名の新自由主義政策推進、規制緩和推進の大合唱のもとで、ついに「例外」と原則が逆転する事態に至ったのです。

働く貧困層の拡大・企業の使い捨ての自由の拡大
 
 労働者派遣の拡大の結果もたらされたのは、誤った政策による人災です。

 ここ最近の20年間で、正規雇用労働者が減少し続ける一方で、非正規雇用労働者は2倍に拡大し、いまでは労働者の3人に1人が非正規労働者となっています。女性と若年層では2人に1人が非正規労働者です。

 労働者派遣の対象業務が原則自由化されてから今日までに、派遣労働者は約100万人から約400万人へと急増し、年収200万円未満の給与所得者が約23%へと増えました。

 派遣労働者は、派遣先企業にとって安上がりであるだけでなく、使い捨て自由の雇用形態です。労働者派遣契約の契約解除を契機とする雇い止めをめぐり、派遣先企業や派遣元企業に対して訴訟を提起する労働者が激増しています。
(〜2〜に続く)
posted by siinoki at 07:49| Comment(0) | TrackBack(1) | 法律相談・労働相談
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