2012年02月02日

特別受益が認められるのはどのような場合ですか(遺産分割)

 特別受益の類型には、次のようなものが考えられます。

1)遺贈(民法903条)
2)婚姻または養子縁組のための贈与(民法903条)
3)生計の資本としての贈与(民法903条)
 生計の資本としての贈与に当たるか否か、しばしば問題になるものとして、次のようなものがあります。
 @学資
  学資も高等教育を受けるために支出した費用は特別受益にあたる場合がありますが、近年では高等教育が一般化しているため、親の扶養の範囲と認められる場合には特別受益にあたらない、あるいは相続人全員が同程度の高等教育を受けているような場合には持戻免除の意思表示があったと判断される場合があります。
 A不動産の贈与
 B生命保険
  生命保険について、最高裁平成16年10月29日判決は、「被相続人を保険契約者及び被保険者とし、共同相続人の一人又は一部の者を保険受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率、保険金受取人である相続人及び他の相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益の持戻しの対象となる」と、原則として特別受益とはならないと判断しています。
  特段の事情があるとして特別受益性を認めた裁判例に、東京高裁平成17年10月27日決定(家月58巻5号94頁)、名古屋高裁平成18年3月27日決定(家月58巻10号66頁)があります。
 C死亡退職金
  死亡退職金は遺産の前渡しと評価することは困難で、生命保険以上に、特別受益と評価することは難しいと考えられます。
 D借地権の承継や設定、相続人が底地権相当額で借地(底地)を買い受けた場合など
  審判例として東京家裁平成12年3月8日審判(家月52巻8号35頁)、東京地裁平成20年10月9日判決(判時2019号31頁)があります。
 E遺産の無償使用
  遺産である土地の上に相続人の一人が被相続人の許諾を得て建物を建て、その土地を無償で使用している場合は、使用借権が設定されている土地と評価し、使用借権相当額(更地価格の1〜3割)が特別受益と評価されるのが普通です。
  但し、場合によっては、使用借権負担による減額(使用借権相当額の特別受益の評価)を行わずに土地を更地価格で評価することもあります(土地を使用している相続人が当該土地を取得する遺産分割を成立させるような場合)。
  裁判例として、福岡高裁昭和58年2月21日決定(家月36巻7号73頁)、東京地裁平成15年11月17日判決(判タ1152号241頁)などがあります。
 F建物の無償使用
  被相続人の建物に相続人の一人が無償で居住していた場合、賃料相当額が特別受益となるという考え方と、土地の使用借権と比べると経済的価値が乏しいことなどを理由に特別受益にあたらないとする考え方とがあります。
posted by siinoki at 08:51| Comment(6) | TrackBack(0) | 法律相談・労働相談
この記事へのコメント
遺産分割の調停中です。
兄弟が未成年時(17歳11ヶ月)に起こした事故(ひき逃げ死亡事故)の賠償金を亡くなった父が代わりに支払いました。
特別受益を主張しましたが、相手方は親の扶養義務であったと、認めません。712条、709条によると責任能力がある場合は損害賠償を請求されるとある為、本来支払うべき物を親が子の負債として支払ったとするならば、贈与、すなわち特別受益に該当しないのでしょうか。解決法を教えて下さい。
Posted by 青山恵子 at 2013年02月23日 22:58
 長女の夫の身元保証をしていた被相続人が、同夫の不祥事について責任を問われ、同夫の勤務先に金銭を支払ったが、同夫に対して求償しなかったことは、求償債権の免除として、相続人である長女に対する「相続分の前渡し」としての生計の資本としての贈与であるとして、特別受益を認めた審判例があります(高松家裁丸亀支部平成3年11月19日家裁月報44巻8号40頁)。
 ご参考にしてください。
Posted by 八坂玄功 at 2013年02月24日 10:58
大変参考になりました。ありがとうございます。
賠償金が、被相続人の資産・収入等から判断すると、扶養の義務の範囲を超えると思われる程のものですが、親が未成年者の賠償金を支払うのは、当然のことなのでしょうか?
未成年者(働いていた)の不祥事を親が肩代わりしたものが、特別受益と認められた裁判例を探しております。
参考になるものがございましたら教えて下さい。
宜しくお願い致します。
Posted by 青山恵子 at 2013年02月24日 14:34
17歳11か月の未成年者が負う損害賠償債務は、親の監督責任が認められる特段の事情がなければ、未成年者自身の債務であって親には責任はありません。支払い義務のないものを代わりに支払ってあげたのであり、扶養義務とは関係がないように思われます。
Posted by 八坂玄功 at 2013年02月24日 19:03
大変貴重なご意見、誠にありがとうございました。
参考にさせて頂き、裁判に挑みたいと思います。
Posted by 青山恵子 at 2013年02月25日 22:21
 その節は大変お世話になりました。おかげ様で少額の解決金で調停成立となりました。誠にありがとうございました。遺産相続の件は終決したのですが新たな問題が発生した為、再度ご相談させてください。
 今回、私が相続した不動産の敷地内に兄弟の私物(車のタイヤや部品)が多く残されており、近く不動産を売却する予定がある為、困っております。調停成立の際に調停員より3月中に引き取るよう伝えて頂きましたが、未だ放置されたままです。(15年以上置かれたままです)期限内に引き取りにくるよう内容証明郵便を出そうと思っておりますが、それでも無視するようであれば、どうしたら良いのでしょうか?
家を売却する事は知っているので、嫌がらせをしているのだと思いますが、何か法的な措置はございませんでしょうか?宜しくお願い致します。
Posted by 青山恵子 at 2013年04月05日 16:15
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