2013年01月30日

「政務活動費」に関する中野区議会への意見書(市民オンブズパーソン中野)

 市民オンブズパーソン中野は、1月29日、政務調査費を「政務活動費」と改称した地方自治法改正に伴う区の条例・規程の改正についての意見書を、区議会議長及び議会運営委員会委員長に提出しました。あわせて、区議会各会派にも意見書を届けました。

 意見書の全文は下記の通りです。


2013年1月29日
中野区議会議長 殿
中野区議会議会運営委員会委員長 殿

市民オンブズパーソン中野


中野区議会政務調査費の交付に関する条例及び中野区議会政務調査費の交付に関する規程の改正に関する意見書
@ 全国市議会議長会の条例(案)の第5条ならびに別表には調査活動からはみ出るおそれがある「広聴、要請陳情、住民相談」が加えられているので、条例改正においてはこれを政務活動費として認めないことを明記してください。又は、政務調査活動に密接に関連するもののみ費用を支出することが限定的に認められるものであることを明記してください。
A 収支報告書・会計帳簿・支出伝票・領収書・出張報告書の公式webへの掲載、それらのデータのPDF化による開示請求への対応を実現してください。
B 政務活動費の支出に関する領収書は1円以上の領収書全てを添付するよう義務づけてください。
C 広く区民・市民の理解を求めるため、パブリックコメント手続を行ってください。

第1 政務調査費を巡る経過

1 地方自治法100条14項から16項の改正
 2012年8月29日、地方自治法100条14項から16項(地方議会の政務調査費についての根拠規定)が改正され、「政務調査費」が「政務活動費」と改称され、交付の目的が「議員の調査研究その他の活動に資するため」と変更されました。また、改正政務活動費を充てることができる経費の範囲は条例で定められることとなりました。

2 違法な政務調査費の支出、区民から見て大きな問題の感じられる政務調査費の支出
 これまで、地方議会の会派、議員による政務調査費の乱脈使用は数限りなく報告されてきました。提訴された住民訴訟も全国で70件以上、うち52件で支出の一部が違法と認定されています(2012年11月時点)。
 中野区においても、私たち市民オンブズパーソン中野の調査によって、区民から見て政務調査とは関連性がないとしか思われない事例が多々見出されています。
言うまでもなく、政務調査費の財源は国民、区民、市民の税金です。
区民の理解を得られないような政務調査費の支出の実態は改められなければなりません。

3 地方自治法改正の問題点
 上記のような問題があるにもかかわらず、本地方自治法の改正については、「地方議員の活動である限り、その他の活動についても使途を拡大し、具体的に充てることができる経費の内容については条例で定めるという形にした」もの、との説明すらなされています(平成24年8月7日衆議院総務委員会での橘 慶一郎議員の説明)。
これを前提とすれば、地方議会は、政務調査費の使途基準を拡大することができるようになります。
しかし、このような解釈は市民と裁判所が政務調査費の使途についてチェックし、厳格に使われるよう求めてきた流れに逆行するものです。
のみならず、地方公共団体の財政はどこも大変厳しい状況にあります。かかる地方公共団体の財政状況に照らせば、議員についてのみ公金支出の規律をゆるめることは、財政秩序の観点からも市民に対する信義という観点からも許されません。
加えて本改正案は、2012年8月7日に突如衆議院総務委員会に提出され、たった約3時間後に可決され、その後もほとんど議論無く法案成立に至ったもので、改正の必要性が事前に国民に具体的に説明されたり、議論されたことはありません。
この改正に対しては2012年8月18日、全国市民オンブズマン連絡会議が反対の声明をあげている他、各地のオンブズマンも同様の声明をあげています。また、多数の新聞社が社説として取り上げて改正の経緯・内容を批判し今後の各議会の動向を注視しています。


4 全国市議会議長会の条例案の問題点
 このような中で、全国市議会議長会は平成24年11月19日に「○○市(区)議会政務活動費の交付に関する条例案(例)」(以下「条例(案)」という)を各市議会に示すに至りました。
 しかし、条例(案)は政務活動費の無限定な支出を誘発するおそれがあるといわざるを得ません。
そこで、貴議会に対し、下記の通り、支出に限定を設けることおよび、支出の透明性を実現する条項を定める内容の条例改正をされるよう、求めます。

第2 条例改正に対する意見
1 議員、会派の調査活動と密接に関連するものに限定すること
 政務調査費の名称が政務活動費に変更されたとはいえ、これは議員の調査権限を定めた地方自治法100条に規定されるものである以上、議員・会派の調査活動と無縁な活動への支出を許すものではありません。
 したがって、今回、条例(案)の第5条ならびに別表に調査活動からはみ出るおそれがある「広聴、要請陳情、住民相談」が加えられている点は問題です。これらはこれまでの政務調査費条例では使途が認められてこなかった筈のものであり、地方自治法100条が予定する議員・会派の調査研究の範疇に入るものではありません。よって条例(案)がこれを定めていることは法の拡大解釈と言わざるを得ません。仮にこれを条例化しようとする場合であっても、議員・会派の調査活動に密接に関連するもののみ、費用を支出する余地が認められるべきであり、これが条文上明白に理解できるよう、支出目的に限定を設けることを求めます。
  三重県四日市市では、同条例(案)第5条の「各種会議への参加等」、同別表の「会議費 会派が行う各種会議、団体等が開催する意見交換会等各種会議への会派としての参加に要する経費」に関して、飲食を伴う懇親会への支出の余地のない条例を作成する方向で検討がなされています(2013年1月19日朝日新聞三重版)。
2 透明性を確保する方策を条例に明記すること
 改正地方自治法があえて100条16項に透明性を求める条項を入れたのは、改正によって調査活動とは無縁の支出を助長することを警戒し、これを住民の目で監視することで、違法・不当な支出を防止するとともに、会派・議員の説明責任を尽くさせようとしたものです。
 したがって、これまでに条例化されてこなかった会計帳簿(規程(例)第6条で調整すると記載があるもの)や、会派・議員の活動実態をより透明化する活動報告書・視察報告書の作成を条例で会派、議員に義務付け、議長に提出することを明記することが法の趣旨に適するといえます。
 なお、議会に提出される政務調査費の領収書の写しは多数に及び、市民が複写を取るだけでも莫大な費用がかかり、透明性に欠けているのが現状です。
この点、函館市議会では、全領収書だけでなく、収支報告書・会計帳簿・支出伝票・領収書・出張報告書などすべて、市議会公式webに掲載し、透明化を図っています。愛知県議会では、議会事務局で2万枚を超える全領収書をPDF化し、CD-R3枚210円にて開示請求に対応しています。都内特別区においても、世田谷区では、関係書類のwebへの掲載を既に行っています。
中野区議会においても、収支報告書・会計帳簿・支出伝票・領収書・出張報告書の公式webへの掲載、それらのデータのPDF化による開示請求への対応を実現してください。
また、政務調査費支出への領収書添付は、都内特別区23区の内、中野区を除く22区が、1円以上の領収書全てを添付させることとしています。中野区においても、ただちに、1円以上の領収書全てを添付させる条例・規程の改正を行ってください。
3 透明性のある条例改正を行うこと
 条例改正にあたって、議員以外から構成される政務活動費検討委員会をつくり、公開の場で「喧々諤々、議論をして」(衆議院総務委員会における、提案者の趣旨説明)透明性のある運用とそれが可能となる規定を網羅した条例案を完成させること、広く区民・市民の理解を求めるため、パブリックコメント手続を行ってください。
以上
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