最近読んだ本の紹介です。
この本だけでも読んでから、一人ひとりの主権者が裁判員制度に賛成か反対かを判断した上で、裁判員制度実施の可否を判断すべきだと全ての知人に話をしています。
時事問題に比較的関心を持っている人の中にも、次のような大きな誤解を裁判員制度に対して持っている人が多いのが実態です。
例えば、よくある誤解は「裁判員制度が導入されると、映画「それでもボクはやっていない」で広く知られた痴漢冤罪で、一般人による常識的な判断がなされ、冤罪が減ることが期待できる」というものです。
真実は、裁判員制度は死刑や無期懲役の可能性がある重大事件にのみ適用されるものなので、痴漢冤罪事件には関係はありません。
他にもいろいろな誤解があり、実際の制度のあり方を説明すると、何となく裁判員制度歓迎の雰囲気だった人も「それは良くない」という意見に変わることが多いのです。
裁判員や補充裁判員や裁判員候補者に選ばれた者が受ける精神的苦痛や経済的損失は、まだ制度が実施されていないとはいえ、この本の第8章などを読めば容易に想像することができます。日当1万円程度で、被告人に死刑判決を下すべきかどうかを判断するという苦役に強制的に人を徴用する制度は、徴兵制にも等しいものであり、憲法18条で禁止されている意に反する苦役にあたる可能性があります(本書第4章89ページ)。裁判員は、自分が裁判員に選ばれたことを家族に相談することすらできず、評議の秘密は死ぬまで心の中にしまっておかなければならないのです。
裁判員制度を一歩前進と評価する意見が法曹界には強いのは事実です。しかし、主権者に過酷な負担を強いる制度を、法曹界の中でおおむね合意があるからという理由だけで推進することは、絶対に避けるべきです。私は、現行の裁判員制度の実施には反対です。 深刻な負担を主権者に強いる裁判員制度をこのまま実施させるべきではありません。
講談社のHP↓
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2879034
この本を読んでみたいけれどもお金がなくて購入できないという知人の方には、私の本をお貸ししますのでご連絡ください。
下記の記事を参考にしました
法学館憲法研究所(伊藤真所長)のホームページより
裁判員制度について↓
http://www.jicl.jp/chuukou/backnumber/44.html
2007年12月02日
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恐怖の「死刑判決」への強制徴用
Excerpt: 昨日の「裁判員制度の正体は?」仙台集会。私は遠方で出られなかったのですが、河北新報記事にも取り上げられ、市民の関心の深さがうかがえる集会となったようです。出席した皆様、お疲れ様でした(ただ、記事の...
Weblog: 天下の大悪法・裁判員制度徹底糾弾!!高野善通の雑記帳
Tracked: 2007-12-02 16:07
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恐怖の「死刑判決」への強制徴用
Excerpt: 昨日の「裁判員制度の正体は?」仙台集会。私は遠方で出られなかったのですが、河北新報記事にも取り上げられ、市民の関心の深さがうかがえる集会となったようです。出席した皆様、お疲れ様でした(ただ、記事の...
Weblog: 天下の大悪法・裁判員制度徹底糾弾!!高野善通の雑記帳
Tracked: 2007-12-02 16:07
「裁判員制度の正体」読ませて頂きました。
大変わかりやすく、この本を読むまでの私の「裁判員制度」に対する認識は全く間違っていたことともに、何故この様な「百害あって一利たぶんなし」と思われる法律の国会での審議期間がたった3ヶ月しか行われなかった事に、国民の代表であるべき議員達はいったい何を考えているのかと強い憤りを感じます。
先生が仰るように、裁判員制度は死刑や無期懲役の可能性がある重大事件にしか適用されない事がわかりました。この制度を作った理由は、裁判に「健全な社会常識」を反映させる為とありましたが、今までの刑事事件が全く「健全な社会常識」が反映されていなかったと国民が感じているかどうかは強い疑問を感じます。
個人的な事を申し上げると、現在労働事件の原告である私の立場から見れば、もし仮に裁判員制度を導入する理由を「健全な社会常識」を反映さえる為とするならば、凶悪な刑事事件ではなく、身近な民事や労働事件にこそ、「健全な社会常識」を反映させるべきである様な気がします(大変個人的ですが)。
きっと世の中には私のように、現行の裁判員制度について深く理解をしていない人も沢山いると思います。この本を多くの人に読んでもらい、理解を深めてもらいたいと思います。
先生、そしてこの法律はどうにか廃止にならないのでしょうか?
国会で決まり、裁判所、検察庁、弁護士会、マスコミが制度の推進を前提にしたキャンペーンを行っていますが、これだけ反対論があるのですから、少なくともマスコミは反対論に紙数を割くべきでしょうね。マスコミへの投書、政党への投書などは一定の効果が見込めるのではないでしょうか。