2014年06月05日

被相続人から、相続人である子どもの配偶者(夫)に不動産が生前贈与されています。特別受益になりますか(遺産分割)


 被相続人の子どものうちの一人の配偶者に対して、被相続人が不動産を贈与していたり、家を建てるときに建築資金を贈与していたりすることはよくあることです。これが、特別受益に該当するか否かが遺産分割協議に際して問題になることがあります。
 
 この問題については、相続人本人が受益したわけではないので、原則としては特別受益に該当しないと考えられます。

 但し、例外的に、実質的には相続人本人に受益があったと判断している審判例もあります(相続人の配偶者の夫に対する贈与について福島家裁白河支部審判昭和55年5月24日家月33巻4号75頁、相続人の子に対する贈与について神戸家裁尼崎支部審判昭和47年12月28日家月25巻8号65頁)。具体的な事実関係を勘案した上で、相続人の親族への贈与や援助が相続人に対するものと実質的に異ならない特別な事由があると判断して持戻しを認めています。単に、贈与を受けた者が近親者であることだけをもって、特別受益にあたると判断したものではありません。
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2014年06月04日

特別受益の金額は、いつの時点で評価すればいいのですか(遺産分割)



 特別受益が認められる場合、その金額の評価をどの時点を基準時とするかについては、相続開始時とする考え方と遺産分割時とする考え方とがあり得ます。
 家庭裁判所での実務上は、相続開始時を基準時として評価することとされています。
 一方、遺産分割に際して遺産がいくらあってそれを具体的相続分に従ってどのように分割するか、代償金をいくらにするかという算定は、相続開始時ではなく遺産分割時の評価によっています。
 そのため、特別受益や寄与分が認められる場合には、理論的には、相続開始時の評価と、遺産分割時の評価との両方が必要になることになります(相続開始時と遺産分割時が近い場合には、あえて両時点の評価までしなくてもよいと当事者が合意する場合も多い)。

 特別受益の評価について、具体的には次のような問題があります。
 @金銭
  贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算します。
  換算の基準としては、総務省統計局の消費者物価指数を用いるのが一般的です。
 A不動産、有価証券、ゴルフ会員権など
  価格の変動が経済情勢によるこれらの財産については、原則として贈与された財産の相続開始時点における時価によります。
 B不動産取得のための金銭の贈与
  原則として@の金銭の贈与として評価しますが、場合によっては不動産自体の価格による場合もあります。
 C贈与目的物が滅失した場合
  受贈者の行為によって滅失又は価格の増減があった場合は、原状のままであるものとみなして算定することとされています(民法904条)。
  天災とか不可抗力によって滅失や価格の減少があった場合は、特別受益は無いものとして、又は減少した価格で評価することになります。
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2014年06月03日

特別受益が認められるのはどのような場合ですか(遺産分割)


 特別受益の類型には、次のようなものが考えられます。

1)遺贈(民法903条)
2)婚姻または養子縁組のための贈与(民法903条)
3)生計の資本としての贈与(民法903条)
 生計の資本としての贈与に当たるか否か、しばしば問題になるものとして、次のようなものがあります。
 @学資
  学資も高等教育を受けるために支出した費用は特別受益にあたる場合がありますが、近年では高等教育が一般化しているため、親の扶養の範囲と認められる場合には特別受益にあたらない、あるいは相続人全員が同程度の高等教育を受けているような場合には持戻免除の意思表示があったと判断される場合があります。
 A不動産の贈与
 B生命保険
  生命保険について、最高裁平成16年10月29日判決は、「被相続人を保険契約者及び被保険者とし、共同相続人の一人又は一部の者を保険受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率、保険金受取人である相続人及び他の相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益の持戻しの対象となる」と、原則として特別受益とはならないと判断しています。
  特段の事情があるとして特別受益性を認めた裁判例に、東京高裁平成17年10月27日決定(家月58巻5号94頁)、名古屋高裁平成18年3月27日決定(家月58巻10号66頁)があります。
 C死亡退職金
  死亡退職金は遺産の前渡しと評価することは困難で、生命保険以上に、特別受益と評価することは難しいと考えられます。
 D借地権の承継や設定、相続人が底地権相当額で借地(底地)を買い受けた場合など
  審判例として東京家裁平成12年3月8日審判(家月52巻8号35頁)、東京地裁平成20年10月9日判決(判時2019号31頁)があります。
 E遺産の無償使用
  遺産である土地の上に相続人の一人が被相続人の許諾を得て建物を建て、その土地を無償で使用している場合は、使用借権が設定されている土地と評価し、使用借権相当額(更地価格の1〜3割)が特別受益と評価されるのが普通です。
  但し、場合によっては、使用借権負担による減額(使用借権相当額の特別受益の評価)を行わずに土地を更地価格で評価することもあります(土地を使用している相続人が当該土地を取得する遺産分割を成立させるような場合)。
  裁判例として、福岡高裁昭和58年2月21日決定(家月36巻7号73頁)、東京地裁平成15年11月17日判決(判タ1152号241頁)などがあります。
 F建物の無償使用
  被相続人の建物に相続人の一人が無償で居住していた場合、賃料相当額が特別受益となるという考え方と、土地の使用借権と比べると経済的価値が乏しいことなどを理由に特別受益にあたらないとする考え方とがあります。

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2014年06月02日

特別受益とは何ですか(遺産分割)

 共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、生前に贈与を受けたりした者がいる場合、共同相続人間の公平を図るために、遺贈や贈与を相続分の前渡しと評価して、計算上贈与を相続財産に加算して(「持戻し」と言います。)、各相続人の相続分を算定することにしています。民法903条の特別受益の規定です。

 「みなし相続財産」
 相続開始の時に有していた積極財産(債務を控除しない財産)の額に、相続人が受けた贈与の額を加算したものを「みなし相続財産」と呼びます(「遺贈」は相続開始時に現存する相続財産に含まれているので加算の必要がありません)。
 
 みなし相続財産を基礎にして、各共同相続人の相続分を乗じて各相続人の相続分(一応の相続分)を算定し、特別受益を受けた者については、この額から特別受益額を控除し、その残額をもって特別受益額が現実に受けるべき相続分(相続開始時点での具体的相続分)を確定します。

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2014年06月01日

相続人の一人が海外に住んでいます。遺産分割協議はどうすればよいでしょうか(相続・遺産分割)。


 遺産分割協議そのものは、手紙、電話、電子メール、ファックスなどで行うことができますが、不動産の相続登記などが必要な場合は協議の結果を遺産分割協議書として作成する必要があります。
 遺産分割協議書には、相続人全員が署名と押印(実印)をして印鑑証明書を添付する必要があります。
 海外に住んでいる人は、領事館で印鑑登録をするか、領事館で署名証明書を発行してもらい印鑑証明書に代えることになります。
 海外にいる相続人が日本人ではない場合には、現地の公証人から署名証明書を発行してもらうなどの手続きをとることになります。
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2014年05月31日

遺産分割調停で、遺産に当たる通帳の明細を見る権利(遺産分割)

質問
 現在、遺産分割調停の最中です。私は被相続人から認知された子です。

 相手方は、遺産目録を提出していますが、その遺産目録で通帳の残高が合わない所を指摘すると、ジャンケンの後だしのように、被相続人が亡くなる前に、必要だと思い50万円を引き出したと言ってきました。
 こちらが指摘する前に言われていたら信用していましたが、今では、他の遺産に当たる通帳も明細を見せて貰わないと信用できません。
 遺産にあたる全ての通帳の明細を見せて貰いたいと主張するのは可能でしょうか。別に訴訟を起こさないと見せて貰えないのでしょうか。

答え
 遺産の預貯金の通帳の明細の開示を求めるのは至極当然の要求です。少なくとも東京の家庭裁判所の調停委員は、相手方に対して預貯金通帳の開示に応じることを求めます。
 相手方がどうしても開示を拒む場合は、各金融機関に対してあなたが直接、相続開始前後の入出金明細の開示を求めることができます。ご自身で開示請求をすることが難しい場合には、弁護士に依頼されると良いでしょう。金融機関は相続関係の確認ができれば任意に開示します。訴訟は必要ありません。

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2014年05月30日

遺産分割協議書には相続人本人の署名が必要ですか(相続・遺産分割)

質問
 遺産分割協議書を作るとき実印を必要と聞いていますが、名前はすでにワ-プロで印刷したものでも、問題ないのでしょうか。それとも本人が署名することが必要ですか。

答え
 法律上は自署(相続人本人による手書きの署名)でなければならないというルールはなく、記名(ワープロで印刷したもの)に捺印でも可能です。実印でなければならないという法律もありません。
 しかし、後で真正に成立した遺産分割協議書か否かが問題になりかねないので、自署してもらい、実印で捺印して印鑑証明書を添付してもらった方がよいでしょう。
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2014年05月29日

相続放棄すれば債権者からの督促は止まりますか(相続・遺産分割)

質問
 相続放棄について、教えて頂きたいです。
 今回、子どものいない兄が亡くなりました。
 サラ金からの借金が多くあり、資産は見当たらないため、私は相続放棄を終えました。
 今後、サラ金関係からの督促にはどのように対処すれば、よろしいでしょうか。
 弁護士さんに依頼しないといけないのでしょうか。

答え
 相続放棄の申述受理証明書の写しを債権者に送れば督促は止まります。
 ただし、債権者が相続放棄が無効だと考えるような特別の事情がある場合は別です。そのような特別の事情がある場合には、債権者から相続人に対して訴訟などで請求され、訴訟の中で相続放棄の有効性が判断されることになるでしょう。そのような場合はまれです。
 ですから、弁護士に依頼する必要はないことがほとんどです。
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2014年05月28日

父親の相続を放棄し、祖母が相続しました(相続・遺産分割)

質問
 父親が亡くなりました。父親には、多額の借金があった為、実家に土地建物がありましたが私は相続放棄しました。
 しかし、ある程度時間をかければ、実家の土地建物を人に貸して収益をあげたりして、父親が残した借金を整理することができるかもしれないと思っています。
 そこで、祖母に相続してもらおうと思っています。
 将来、祖母が亡くなった場合、私は祖母の相続人になれるのでしょうか。
 それとも、今回父親を相続放棄しているので相続人になれないのでしょうか。

答え
 将来祖母に相続が発生した場合は、あなたは、お父さんの代襲相続人として相続することができます。
 今回の相続放棄は、代襲相続人として相続することの妨げにはなりません。

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2014年05月27日

相続放棄の手続が必要な親族の範囲について教えてください(相続・遺産分割)

質問
 被相続人に多額の債務があるので、被相続人の配偶者と子が相続放棄しました。
 被相続人の孫が代襲相続することになりますか。被相続人の孫が相続放棄する必要があるのでしょうか。

答え
 被相続人の孫の相続放棄は必要ありません。
 被相続人の子が相続放棄するとはじめから相続人でなかったことになり、孫は代襲相続人ではなくなります。
 被相続人の配偶者と子の相続放棄の後は、被相続人の親が相続放棄し、次に兄弟姉妹が相続放棄すれば、相続人はいなくなります。

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